東日本大震災の記録

東日本大震災の記録 page 62/178

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東日本大震災の記録

東日本大震災の記録62第3章震災発生時、私は一時的に関東で勤務しておりました。関東でも大きな揺れを感じ、急いでテレビの電源を入れたとき、画面に映っていた光景は、海が仙台空港を覆い、ビニールハウスを押し流していく様子でした。しばらくして多賀城駐屯地も海に浸かったことを知り、その被害の甚大さと危機的状況を痛感させられたことを覚えています。多くの市民の方々が寒さと不安に駆られ、自分の小隊員が休むことなく使命を全うしていることを思うと、そこに自分がいないことに不甲斐なさを感じ、自衛官としての自分の存在意義すらかき消されたように思いました。多賀城市における私の任務は行方不明者の捜索でした。市民の皆様のご協力のおかげもあり、多くの行方不明者が早期に発見され、未だ行方不明であった方は残り数名でありました。何としても御家族のもとにつれて帰ってさしあげようと、避難所への問い合わせとともに、町の作り、波の流れ、水のたまり場を分析し、日々捜索活動を続けていました。寒さの厳しい日も雨の降りつける日もありました。しかし、御家族の皆様やご近所に住まわれている方々は、来る日も来る日も我々と行動を共にし、情報を提供して下さいました。家族の絆に使命感を燃やし、地域の繋がりに敬意を表さずにはいられませんでした。発見に至り、再会を果たした御家族は悲しさと悔しさと安堵の入り混じったご様子でした。我々も同じ気持ちでありました。再会に導くことができたことに安堵する一方、もしかしたら救えた命なのかもしれないという悔しさは今も消えることはありません。震災を経験し、家族の絆、地域の繋がりに助けられた我々は、この温かな町に貢献すべく今日も訓練を重ねます。「今日に即応、明日に備えよ」を合言葉に、明日の自分は何ができるかそして今何をすべきか常に考え、行動したいと思います。今日に即応、明日に備えよ陸上自衛隊第普通科連隊22櫻木敬士さん情報小隊長