(聞き手)
今回の震災を通じて、後世に伝えたい教訓はございますか。
(鈴木様)
私たちは戦争の悲惨さを語り聞かされてきた世代ですが、震災の経験は、それと似ているような気がしてなりません。
露骨な映像こそ表には出てきませんが、ある程度落ち着いたら、このような有事になったら大変な状況になる事を広める啓蒙活動が必要になってくると思います。そこが教育になります。
家庭として考えると、家族が離れ離れになった時には被災しにくいポイントを絞って集まったり、指定されている
避難所に集まったりといった対策が必要になるでしょう。
また、映像については見たい人が見られる環境を整えるべきです。
強制的に見せるのはストレスを感じますし、また別の問題が生まれてくることもあります。
(聞き手)
JCの後輩の方々に伝えておきたい事はございますか。
(鈴木様)
私たちの場合は精神論が重視されます。
JCに入会すると同時に、先輩から、利他の精神を叩き込まれ、教えられます。
自分を犠牲にしてでも他人のために奉仕するという基本理念があるので、それを受け継いでいく事が大事です。
ただ、組織全体としては継承していると思うのですが、時代背景が今後どうなっていくかはわかりません。そもそも、今、JCに若い方があまり入会してくれないのです。
(聞き手)
若い方に奉仕の精神が伝わっていると感じられますか。
(鈴木様)
よくわかりませんが、
ボランティアの数は、今は逆に増えてきています。
ボランティアは、やる側にしてみれば、もっとも自己満足に直結しやすい行動なのです。
ですが、そこで申し出てくれる人たちが率先して動ける環境が無い事も事実だと思います。
地域のリーダーが少なくなってきたのが響いていると思います。
(聞き手)
原田様は、どうお考えでしょうか。
(原田様)
今まで防災を考えながら活動してきた中でこれだけの災害が起こってしまったので、災害は防ぎきれない部分があると思うのです。
そうであれば、発災時にはどのような対応をするかという事を、自分の中でシミュレーションしていく事が大切になります。
先ほども鈴木さんが言っていましたが、家族とすぐには会えなくなるような災害が起きてしまった時に集合場所を決めておくなど、一人ひとりが対策を講じておけば混乱を少なく抑える事が出来ます。
それは会社でも同じ事です。塩釜JCのメンバーにも、全国の他のJCに呼ばれて講演をする人がいるので、そういう事を伝えていく事が大切なのでしょう。
また、率先して動こうと思うのであれば、自ら準備を整えて、日頃からのシミュレーションをきちんとしておくべきだと思います。
例えば、家族の安否確認が出来ない中で作業をしても、気が気で身が入らないのであれば、成果は上がりません。安否確認が出来て、安心した心持ちで活動すれば身も入るので、そのために備えておくべきなのではないでしょうか。
(聞き手)
今野様は、何を後世に伝えたいとお考えですか。
(今野様)
お二人がおっしゃった通りだと思うのですが、付け加えて言うならば、独断で
判断せず、警報などの情報を真摯に受け止めて対応する事が必要になると思っています。
(聞き手)
これまでの質問以外の内容で、伝えておきたい事はありますか。
(鈴木様)
心配なのは、私たちが多賀城市の職員さんたちと築いている関係を、後輩達も同じように作っていけるのかという事です。
今でこそ顔なじみの間柄ですが、同じ組織でも人が変われば、再構築しないといけなくなる部分が出てきます。
(聞き手)
震災に関わった方たちの中で、年齢や年代の差による違いは感じられるのでしょうか。
(鈴木様)
そのポジション毎に違うので、一概には言えません。
トップで管理している方や現場を見てきた方、それぞれに別の苦労や危険が伴うので、年代よりは立場の差だと思います。
また、市役所に対しては、私たち青年世代とパイプを持ってもらえればありがたく思います。
市の職員さんと仲良くなっても、その方が異動してしまえば別の方が替わりに入ってきます。そういった、人との
繋がりまで構築するのは難しい事なので、接点を増やしていけたらと思っています。顔が見える関係にしていくことが、私たちの課題なのです。
(聞き手)
JCと市役所で会議などを開く事はあるのでしょうか。
(今野様)
多賀城市役所では、例えば万葉まつりの実行委員会の中に市の職員の方が入り、JCの職員と打ち合わせをすることもあります。
(鈴木様)
塩釜市も同じで、「みなと祭」という共通の実行委員会の中に職員さんが入り、打ち合わせの時には塩釜市役所に出向いて話し合いをします。行政とのコミュニケーションは、今後とも大切になってきます。
(原田様)
せっかくこうして、行政の方々ともある程度腹を割ってお話出来る関係になってきましたので、それを続けていければありがたいと思います。JCに限った事ではありませんが、行政と民間との連携を様々な場所で作っていければ、それが市民の人たちのためになります。
(今野様)
今回の震災を、私たちが今後どのように伝えていくのかが課せられた義務だと思っていますので、頑張っていきます。命を守るためにどうすればいいかを、私たちは経験してわかったので、それを伝えていく事が出来れば良いと思っています。